あるアトピー患者の苦悩と解放 その4

 ども、からだのエンジニア 藤井崇次です。

 千葉県は習志野市で、泰心堂はりきゅう院のオーナー鍼灸師として活動しています。施術回数は2万回を超えてからもう数えていません。

 本日のお話は、どうしましょう? 私の考え方は都合の悪いこともちゃんとお話しするという考え方なので、今回は非常にうまくいった例と、残念ながら途中で打ち切りになり悔しい思いをした例とをお話ししましょう。


最もうまくいった症例 20代 女性 アトピー性皮膚炎

 ある日の午後、たまたま空いていた時間に飛び込みで来た女性。以前から『泰心堂』をチェックされていたそうでしたが、踏ん切りがつかなかったとのこと。

 ここ2~3日痒みが酷くなり、医師から処方されている軟膏を塗っても収まらないと来院。炎症が酷く、体が熱を持っている状態。特に酷いのが首、右腕、太ももの付け根付近。前腕部は引っ掻き傷あり。夜も眠れず不眠気味。ここ2週間ほど便秘気味。

 鍼灸は3か所、合計5年ほど通っているとのこと。基本施術ではなく、高麗手指鍼術を希望とのこと。

 問診、脈診、FT(フィンガーテスト)で方針を決め、手に鍼を置いていくことにした。

 初日の処方は、脾熱方、大腸勝方、胆勝方。脾熱方は炎症が激しく、赤み、かゆみが強くなっていたので。大腸勝方、胆勝方はFT=体の反射を目安に追加。手指鍼で施術する場合は、アトピー性皮膚炎は五治処方のみで行うことが多い。12分ほど鍼を置いておくと、「さっきまで熱いくらいだったのに寒い気がします」と言うので、脈が落ち着いているのを診て、鍼を抜く。触ると手が冷たいと感じるまで冷えていた。

 この反応は、高麗手指鍼術においては割と多く、鍼を抜いてしばらくすると体温が戻り、温かくなる。冷え性の方に手の鍼をすると「施術後しばらくすると手がすっごく温かいです」と喜ばれます。程度には寄りますが施術中から手が冷たくなる人は、利きが良いように思います。

 初回から3回目までは患者さんと相談のうえ、間隔を詰めることにした。施術期間内で最も痒み激しき時期で、3回とも脾熱方を主として施術した。施術の前後で、赤みが明らかに減少した。ここまで劇的に効果を出したケースは、それから5年ほどたった今でも記憶にない。

 4回目から8回目は、脾勝方を中心とした処方。FTで肺経の反応を拾うことが増える。肺勝方を数回混ぜる。

 9回目から11回目は、再びかゆみが酷い時期。脾勝方を中心とした処方。大腸勝方を追加。赤みが強かったが施術中から速やかに赤みが薄まる。

 12回目から15回目、脾勝方を中心とした処方。

 16回目から終了まで、脾正方、肺正方

 計25回。最後の3回は3週間に一回。赤み、かゆみが再発しないので終了。この間、病院での治療と並行して施術をした。


 これは非常にうまくいった例です。途中に指導した自宅でのお灸もきっちりとルールを守って行ってくださったので、上手くいったのかなと思います。アトピー性皮膚炎は体質由来であるため、通常は半年から数年にわたる施術が必要なケースが多く、途中のモチベーションを維持することがとても大変。初回の効果がはっきりと出たことで信用を得られたことが続けてもらえた要因だと思います。


失敗例 30代 男性 アトピー性皮膚炎

 本当はあまり失敗例をお話しするのはイメージとして良くないのでしょうが、ちゃんとお話ししたいと思います。

 30代 男性 独身でサービス業に努める事務方の会社員。来院時はかゆみが激しい時期ではなく、むしろ穏やかな時期。最も酷いところは左腕。どうも掻きむしるのが癖の様で、問診時にも何度も繰り返す様に掻きむしっていた。施術方針はこちらからは手指鍼術を勧めるも、「刺絡をしてほしい」の一点張り。当時、某氏の『免疫革命』、『自律神経免疫~』により刺絡の言葉が独り歩きしていた時期なので、説明するのに苦労した。

 別に刺絡と言う技法は鍼灸の原型と言われる”へん石”から派生したと言われる技法だが、別に万能と言うわけではない。虚弱体質や高脂血症などで血液凝固阻害剤などを飲んでいる方などは避けるべきだし、敏感な人も別の手段があるのなら避けるべきだ。まして鍼灸の刺絡と某医師がいう刺絡は目的行為が違うので鍼灸の技法か?と聞かれたら正直回答に困る。鍼灸の技法だというのなら、『無血〇〇』などという考え方はあり得ない。だってそれただの皮膚鍼だし。

 針灸の刺絡は、概念上のエネルギーの在り方である気血の流れが滞り溢れている箇所があるから、その”つまり”や”滞り”を特殊な鍼をもって刺激し、流れを良くすることを目的にしたもので、出血しやすいのであって、出血することが目的ではない。

 一通りお話をして了解をいただいた上で、某氏の手法の元ネタである浅見刺絡を参考に鍼灸技法の井穴刺絡で施術を組み立てて適応。

 最低週一、飲酒制限、糖質制限など施術間隔や生活指導の話をしても、施術は2週間に一回だったり、三週間に一回だったりと予約しても直ぐ「変えてくれ」と言い、無断キャンセルしても「忘れてた」と予約日以外にふらりと来て施術してくれと言われたり、生活の中で制限してほしいと言ったことも守らず、飲酒状態で来院なんてこともあった。

 結局10か月で8回の施術で、「高いわりに効果ねえじゃないか」と言われ、次の予約から来なくなった。

 はい、以上、大失敗の例です。一つは信用を得られなかった点、一つは提案通り来院を促せなかった点、一つは最初から施術を拒否できなかった点などが大きな失敗ですね。ちゃんと伝えられなかったという点で大きく反省の残るケースでした。


習志野市大久保の鍼灸&整体 泰心堂はりきゅう院

臨床経験10年以上、総施術回数は7万回以上。 頭痛、めまい、疲労感を伴う体調不良などの取り扱いが多い各種特殊鍼灸術を用いる鍼灸院 こまつ式高麗手指鍼術、DRTなど認定院 【ご予約はメールまたはWEB予約から】 taishindo@outlook.jp 047-404-5225

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