あるアトピー患者の苦悩と解放 その3

 どうも、からだのエンジニアこと泰心堂 藤井崇次です。続き記事の3本目となります。前提はその1、施術に対する考え方はその2でお話させていただいています。今回の”その3”症例のお話です。


乳児湿疹

 まず、一例目は、なんと生後三週間。もちろん、最年少でした。アトピー性皮膚炎と言えるのかは微妙だったのですが、両親とも過去にアトピー性皮膚炎の経験者だったので、「乳児湿疹が酷くて連れてきた」という例ですね。

 通常、育児の本などには一か月検診が過ぎるまでは乳児を連れての外出は控えるようにと言われるので、例外的な事例だとは思います。

 お母さんに、抱いてもらった状態で大師流の特製三陵鍼で触れる程度の小児鍼を都合4回行いました。施術の間隔は初日、二日後、三日後、三日後の計四回。初診時の湿疹箇所は頭、顔、胸、太ももの内側、背中全体が赤くなっていました。医師からは保護クリームでしょうか、軟膏を処方されていて、「乾燥するとかゆくなるから、泣き出すようならこまめに塗る様に」と言われたそうです。

 小児鍼のコツは触って離れる際の皮膚の感触で鍼の当て方を変えることです。硬いときはほぐす様に、緩いときには引き締めるように、湿ったときは散らす様に、乾いたときは集めるようにとリズミカルに触れながら操作します。

 触れていくとすっと熱が引くように赤みが取れていきます。初回は加減が不明なので、さらっと一通り流れるように触れたら終了。お母さんに泣き出す回数や泣き出した時の皮膚、会話、居場所などをチェックするようにお話して、次回のお約束をします。

 二回目に残っていたのは、頭、太もも、背中。前回見た時よりも程度は軽そうに見える。「泣き出す回数がいつもより少なかったのでよく眠れました」とお母さんの方が顔色が良かったのを覚えています。前回同様にさっと鍼を触れていくわけですが、今日は頭の方が突っ張る感じがして硬い。心持ち鍼を立て刺激量をわずかに増やす。あとは一通り流して終了。

 三回目、ほとんど赤みがない。前二回に比べてば薄っすらと赤みが見える程度。頭の突っ張りなど気になる場所はなかったので、全体的に刺激量を減らす方向でさっと鍼を触れていった。

 四回目、赤み解消。さっと流して終了。奇麗に湿疹が消えていたので、略治として終了。「一週間ほど様子を見て、再発するようでしたら連絡ください」とお別れした。

 翌月にメールで連絡をいただきました、「すっかり良くなった」と。


17歳 男 学生 アトピー性皮膚炎

 通常、児童期が湿潤型、思春期以降が乾燥型と別れるケースが多いそうだ。じゃ、17歳なら、乾燥型だね! と飛びつくのはお勧めはしません。

 発症したのが、中学生の頃。最初は皮膚が赤くて痒いから始まり、次第に痒くてたまらないに変わり、皮膚科に行ったら「アトピー性皮膚炎ですね」と言われたと来院。実は来院までに半年以上時間がかかっています。最初にメールをいただいたのがお母さんから。内容は端的に書くと「絶対に治りますか?」というもの。私たち治療家は、『絶対に良くなってほしい』と思い、技術を修め経験を積み、さらに知らせる努力をしているわけですが、世の中に100%はありません。どんなに100%に近づいても、予想もしないことが起きます。なので、私からの回答は「絶対はお約束できませんが、少しでも近づくように精いっぱい頑張ります」と正直に答えました。開業2年目の春のことです。それから季節をまたぎ、何度かメールのやり取りをしました。そうですね、20通は交換したと思います。あとで伺ったのですが、決め手は「チャレンジしませんか? 私とチャレンジして人生を変えませんか?」という私の提案の言葉だったそうです。

 彼と会ったのはその年の冬でした。身長は170cmを超え、肩幅は広めだが、体型は中肉中背といったところ。顔色は暗く、歩幅も狭く、足音が重い。初回は両親とともに来て、主にお母さんが状況、病歴などこちらの問いかける答える感じでした。施術自体はご両親の目の前で行い、手元に注がれる視線に緊張したのをよく覚えています。

 まず体表観察をし、痒い部分、痛みを感じる部分、特に気になる部分などを質問しながら確認するのですが、本人の反応は鈍く、むしろ側で見ているお母さんの方が積極的に答えてくれました。

 泰心堂では積聚治療を採用しているので、腹積の話をしますが、初日は心積。痞(つか)えてしまって、言いたいことも吐き出せないのでしょう。背部の施術の段階で、指標を確認したところ、中でも首と右志室に非常に強い痛み反応がありました。

 通常、初診の方は基本である”順治(第一方式)”から始めるのですが、手が動いだので第三方式から始めました。一穴鍼を当てては体が変化することを確認し、指標の変化が鈍るまで一穴に刺激を集中し、鈍ったら次の一穴に集中。”鍼をして脈を診る”ならぬ、鍼をして指標の変化を診るを地で行う感じですね。

 とかく学びたての方などは、「一発で良くなるのはどこですか」とか「特別に効くツボはどこですか」と聞かれますが、そうではなくて、なぜそこを選んだのかの方が大事です。

 手を高感度センサーにして、全体と局所を同時に診、一穴一穴丁寧に鍼を当てていくこのスタイルは人のよってもどかしく感じる人もいますが、結局、丁寧に体の反応を診ているため、患者さんにとっても無理がなく、患者さんの体としても負担が少なく、なおかつ効果的な刺激になるようです。

 施術を終えた後、術前と同様にどこが痒いか、痒かったところはどんなようすかと確認をすると今度は本人が積極的に答えるようになっていました。

 術前のお母さんが積極的に答える様子と術後の本人が積極的に答える様子が対比的だったためよく覚えています。

 腹積は心積が最も多く、次いで脾積、腎積。最後に心積傾向で終わりました。かゆみが激しい時期は、頚部刺絡と指先、足の指先の刺絡を数回に一度混ぜ、比較的収まっている時期は、督脈という背骨と同じラインの経絡上の反応点と肋骨の下、季肋部などに残積が残りやすかったので募穴を中心とした鍼などを繰り返しました。

 生活指導としては、ノートを2冊用意してもらいました。まずは一冊目の使い方を説明します。簡単に言うと、王様の耳はロバの耳。井戸ではなくてノートに吐き出し、ノートを仕舞いなさい。それだけ。できれば鍵付きの引き出しに入れなさいと。

 2冊目の使い方は半年後にお話しすることになりました。この時にはすでにひどく痒い時期と、そうでもない時期を数回繰り返していました。ご両親の話、本人の自覚でかゆみの程度と範囲が狭くなっていたので、新しいノートの使い方を提案したわけです。

 そうですね、今なら望月俊孝さんの『夢をかなう宝地図』と言えばわかりやすいかもしれません。将来の夢、やりたいことを”具体的に”考えて書いてもらいます。何をしたいのか、それはどういう状態か、そのためには何が必要かなどなど書き出すことで具体化するとともに思考の変化を促します。

 長期療養の方って基本的に暗い。諦観というのでしょうか? やる気が出ないそうですね。で、その一方で、物凄いエネルギーを圧縮して内包しています。負のエネルギーというと悪くとられがちなんですが、負のエネルギー(不平、不満、精神的な疲労)が勝ちすぎるのが問題なんです。東洋哲学ていう極という考え方ですね。陽気も陰気もなければまずいのですが、極まると一方的過ぎてバランスを崩す。陰極まれば陽となる、陽極まれば陰となる。自然と言うのはよくできているのです。だから東洋哲学の考えかを現す巴紋には極の部分が極めて少なくかかわれいるわけです。人の体も一つの自然。極まり突き抜ければ、逆転する。だから初期には吐き出させ、回復期にはため込ませるわけですね。

 結局、彼はどうなったかと言うと、施術期間は約1年半、回数にして67回で治癒、日常的に気にしなくてよいレベルとなりました。その間に、定期テストが数回、大学受験が4校分。なんと現役で大学に合格しました。


 

習志野市大久保の鍼灸&整体 泰心堂はりきゅう院

臨床経験10年以上、総施術回数は2万回以上。 疲れた身体を活性化し、ストレスに抑圧された心を解放する鍼灸術を提供している千葉の鍼灸整体院

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