質問に答えます。その76 邪気をもらいました?はあり得ない。
どうも、からだのエンジニア&からだの専門家 鍼灸師&整体師 藤井崇次(泰心堂)です。
たまに言われますが、「泰心堂先生は、伝統鍼灸否定派ですか!?」と。
私、どちらかというと伝統鍼灸、経絡治療の出身者なんですよね。恩師のひとり(柳谷素霊の内弟子)の言が正しいのであれば、柳谷素霊の孫弟子にあたるそうですしね。また、時代時代における最新技術や常識が違いますので、昔々の常識の中で最新技術を積み上げてきた先達の皆様に対して、敬意を持っています。
そのうえで、現代の鍼灸医学、徒手調整術の考え方は現代の常識に基づいて考え直すべきだと考えているだけです。
具体的には、難経や素問の解析をしたいのであれば、中医学の知識よりもまずは中国語の知識が必要だと言っているわけですね。
虚者補其母
鍼灸的には有名なフレーズですが、これ文法的には、”虚”=名詞かつ主語、者=助詞かつ比較、補=動詞、其=指示語、母=名詞、目的語。
すなわち、虚は動名詞でも形容詞でもないのです。状態を示す名詞です。だから読み下し分の「虚するもの(者)は」とか「虚すれば」というのは意味不明な訳し方なんです。無理やり日本語にするの出れば、単に「”虚”は」と訳すべき部位なんですよね。英文法における単純なSVO文型です。
つまり「かつては無理やり読み下し分を作っていたけれど、今現在は翻訳ソフトなども進歩しているのだから普通に訳文作ればいいじゃんっ」てことですね。
さて、本題に入っていきましょう。
「先生、患者さんに邪気をもらったんですがどうしたらよいでしょうか?」
「邪気のせいで、人数をこなせないんです」
などなどの質問というか相談というかが来ましたが、私から言わせると意味が不明です。
これね、邪気とは何か?という定義が欠けているのです。
これいわゆる日本の標準的な東洋医学、東洋哲学的な視点でお話をすると、ありえません。
何故なら、邪気とは状態だから。
個人的には瘴気の概念、霊障(さわり)の概念と誤解・混同しているのではないかと思います。
東洋医学、東洋哲学における邪気の概念は単体で存在しえず、正気という力の流れに対する概念として定義されたものです。
正気が自然な川の流れとしたとき、その綺麗な流れが崩れたところ=邪気として捉えているというだけです。
そういう流れがからだの中にもあるだろうと仮定した先達たちが、調子が悪い状態=うまく流れていない状態と定義し、調子が良い流れ=正気、調子が悪くなっている部分の流れ=邪気として捉えようとしたってことですね。
でも、現実での川の流れは常に上流から下流に向かって流れているわけではありません。
例えば、カーブしているところ(メアンダーの部分)では、まず重力(引力)方向に水が動いていて、岸壁にぶつかり、方向転換を起こします。ここをミクロあるいは微分積分の美文的な視点で注視してみると、壁にぶつかった箇所で作用反作用の法則と入射角と反射覚、反射係数などに基づいたベクトルが発生します。つまり、流れがズレ、部位的には逆流、斜め方向にズレて流れたりしながら、大きな流れに巻き込まれて結果、水が曲がって流れるという現象が生じています。
また、河口においては、潮汐の兼ね合いで、普通に(川の流れに対して)逆流起こしています。ここの現象だけを切り取ると確かに逆流で邪気の状態になっています。これ、視点を変えると、潮汐力の兼ね合いで逆流を起こしているだけなのでこれも自然な流れであり、正気の流れになります。
つまり、どの程度を流れがおかしいととらえるかは、見ている人の立場によるってことですね。
これ、鍼灸治療における正気←→邪気の捉え方も同じです。
ただ、間違えないでほしいのは、これ外部作用ではなく、内部作用だということ。
東洋医学における気の発生のお話で出てくるのは、精気、原気、水穀の気が基本であって、大気の影響は無視されています。(体調に寄り影響を受ける程度の話)
ということは、施術者の皆さんは、患者さんの(食べ物の)差し入れを食べることを除いて、気を内部に取入れることは考えにくいわけです。
ということは、邪気をもらっているわけがない。
じゃ、なんで「邪気をもらった」なんて表現がよくでるのか?
そこで瘴気や霊障と混同というお話になるわけですが、まあ、ぶっちゃけ話をすれば、施術者自身の内部作用(内心)において、疲労感を感じたり、気分が悪くなっているだけのこと。
極論言ってしまうと、疲れた理由を患者に責任転嫁しているだけです。
こういう人の話を聞いて私が思うのは、「施術が嫌いなんだな」とか「嫌いな顧客の施術を無理にしたんだな」とか「姿勢が悪くてより疲れているのかな」とか「施術者の体力ねえな」とかですね。
ピンとこない方は例えば、ある映画を見に行ったとしましょう。
Aさん:感動して泣きだす
Bさん:爆笑する
Cさん:つまらないと感じる
Dさん:怒り出す
これ同じ映画をみてもその人の立場あるいは在り方、あるいは感受性によって反応は異なります。これらはそれぞれの人の内部作用の問題だからです。
つまり、邪気をもらうなどといっている施術者は、内心で患者さんを邪気のかたまり扱いしているか、「私がこんなに疲れるのはあの患者さんが悪い」と思っているってことですね。
こういう相談者に対しての私の回答というか助言は、
1.筋トレしろ(筋力的な余裕、持久力的な余裕、体温上昇による免疫力向上)
2.施術姿勢見直せ(立っていて疲れるのなら椅子に座って施術すればよい。)
3.休み取れ
ですね。というか意識を変えろとか、概念を変えろと言うのはとても難しいのでぶっちゃけ体力的な面で解決するのが一番だと思いますね。
あ、ちなみにうちでは患者(patient:耐える人)ではなく、依頼者もしくは顧客(client:問題解決のため手を組む人、お互いに利益を交換する人)です。
だから、お互いに”お得”な関係なので、邪気などもらいません。私は施術を通じて報酬をもらう、顧客は、からだが楽になったり、頭がスッキリしたりと体が楽になるという報酬を受け取る。そういう関係性になっています。
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