質問に答えます。その44 揉み解してはいけない理由
おはようございます。
からだのエンジニア&からだの専門家 鍼灸師&整体師 泰心堂 藤井崇次です。
先日から、”常識的な話”をしているにも関わらず、いろいろと突っ込みのメールをいただいていますので、例の『質問に答えます。』シリーズでお答えしたいと思います。
「揉み解すな!と言われましたが、でもマッサージは有効ですよね。なら揉み解すのも間違いじゃないですし、患者満足度を考えればむしろ良いことではないでしょうか?」(千葉 N先生)
はい、この類のメールを合わせて23通いただきました。ありがとうございます。
もちろん、私はすでに書いてあるとおり、上手な達人級のマッサージについては否定はしていません。が、揉み解すというのは基本的に下手な、非達人級のマッサージはやればやるほど治癒とは程遠い行為だと言っているだけです。上手な、達人級の皆様方には関係ない話ですよね? 残念ながら私、そんな人ほとんど知りませんが。
さて、揉み解してはいけない理由は、私の好みではなく、解剖学、生理学の上の体の構造上の問題です。
つまり、これは現代医学で肯定されている事実といっても過言ではない論理的なお話です。事実として学校の教科書レベル、それも中学高校レベルで学ぶ事柄を根拠としてお話することができます。
分野的には、理科科学ー生物あるいは保健体育学の分野ですね。そこに数学のベクトル(高校の数学 代数幾何)と重心の話(三角形のお話でてきますので、早い人で小学生の算数でしょうか)。あとは運動系の部活をやっていた人は筋トレによる筋力増強の仕組みと条件のお話。(保健体育)
はい、皆さんご存知ですね。
決して専門分野のお話ではありません。
まず、コリとは何か?
筋肉が緊張している状態である。筋肉が緊張することで緊張部位を中心とした圧力が高まり、血管圧迫、神経圧迫を引き起こします。
だから解さなければならない。
違います。なぜ、緊張しているかが大事です。
コリ=筋緊張であるとするのならば、なぜ、筋緊張するのか?
この場合は、運動ではなく、専ら姿勢を維持しようとして筋緊張を作ることを想定しているわけですから、姿勢を維持するために必要であるから筋緊張をしなさいという命令が出ているから。つまり、自律神経系の作用として”当然に”筋緊張しています。
ええ、当然に筋緊張している=コリを作っているのですから、単に筋肉をほぐしたところで無駄です。
では、なぜ、筋緊張しなさいという命令が出ているのか?
これ、簡単に言うと重力のせいです。重力のお話はニュートンの万有引力の話ですね。つまり物体は互いに引かれ合う。そしてその力は質量が大きければ大きいほど引き寄せる力が強い。ならば、人の近辺で最大の質量を持っているのは地球ですね。故に、常に地球の方向へと引き寄せられつ続けているために”重さ”が生じているわけですね。
※重力、万有引力のお話は突っ込みを入れると結構細かい話になりますアリストテレスとかフックとかガリレイとか、ケプラーとか……、ニュートンはその現象を一般法則として適用できるのではないかと着想した意味で代表者として扱われるているんですよね。
話を戻しましょう。なんのこっちゃ? と思ったと思いますが、要はですね、肩こりを例示するのなら、腕が常に地球(地面)に引き寄せられているわけで、何の支えもない場合、自然と腕は地面に落下するということ。
だから、腕が落っこちないように、倒れないように、骨格構造を上手に使って支えを作るという構造をそもそも生物の体は備えているということ。※参考『体の設計にミスはない』(橋本敬三著)
それがうまく使えている状態のときは腕の重さなど気にならず、わざわざ筋緊張を作ってまで支えなくても良い。
が、例えば、腕を伸ばす。腕を伸ばすことで体のアライメントは一時的に崩れます。なので、骨格ではなく、筋肉運動で腕を支え、細かな制御を行います。当然にその腕を動かすために腕周りだけでなく、腕を動かすために支える筋肉群にも緊張が走ります。
そう、手の指一本動かすだけでも実は体は連携、連関して動いているわけです。
この辺のお話は、経筋理論やキネティックチェインあるいはアナトミーチェインなどの話になりますので少々専門的な話になりますね。
ま、ここでは簡単に、筋関節が本来の位置=適正な位置、筋骨格を利用して無理なく支えられる構造的位置にない場合は、筋力などで頑張って支えなくてはならないということだけ覚えてください。
この頑張っている状態が、肩こり、腰のはりです。
つまり、生じて当然のものを揉み解しても、あたらめて生じるのが道理というものである。故に解すだけ無駄というお話が一つ。
そして次に筋肉の問題。
筋肉は神経刺激を受けて、縮みます。はい、縮むのが本来の作用です。関節運動が起こるのはこれは骨格構造の問題であって、筋肉それ自体は短縮しかしません。
せっかく、上手に短縮して肩こりなどを作って体を支えているのにもかかわらず、他動的(外から)無理やり力を加えて、縮むな!とばかりに邪魔をされるわけです。筋肉自体も体の要求を完了するために頑張って縮み続けようとします。
これが簡単にコリが解れない理由の一つ。縮めという命令を出しておきながら、解せ(縮ませるな)ですから、矛盾していますよね。
どちらが自然かといえば、縮むほうが自然なのですから、揉み解し→自然治癒力!? ちゃんちゃらおかしいと言われてもおかしくはないですよね・?
じゃ、なんで筋肉を揉み解し続けると、筋肉が柔らかくなりコリが取れるのか?
筋肉が疲れて、傷んで収縮することができなくなるからです。
外から加えられたダメージに反応できなくなったわけですね。
この状態は、筋トレをしっかりと行った経験のある人は知っていオールアウト=もう一回ができません状態に近い。
オールアウトは効率的に筋トレを行う場合はとても大事な概念ですね。
しっかりとオールアウト状態にもっていくことでその後の超回復がしっかりと行われるわけです。
気づきましたか?
揉み返しって、超回復のせいなんです。
超回復の具体的な作用は、ここでは1.要求にこたえられるように筋繊維の使用割合が増加する。2.筋繊維自体が太くなるの2つと覚えてください。
結果、どうなるかというとより強く収縮できるようになる!ということ。
これ、肩こりで例えると、より強く肩の筋肉を収縮できる→より硬いコリを作ることができる!
はい、自然な作用ですよね。
ちなみにですが、使用することができる筋力が増大するわけですから、相対的には小さな力で支えられるようにもなりますので、肩こりが緩和しないわけではありません。
でも、構造上の問題を解消していない以上、体重の約1/8ほどの重量のある腕を支えるために肩こりはしやすい状態は変わらず、頭、腕、胸部などの重さを支えるために腰は張りやすい状態は変わりません。
故に、揉み解すだけでは無駄となる。
三つ目の理由は、筋肉が緊張する理由。つまり、神経系の問題。
細かい話は置いておいて、ざっくりと姿勢維持などは自律神経系の作用だとここでは考えてください。積極的な姿勢維持や消極的な姿勢維持、あるいは能動、受動などの話はありますが本旨ではないのでさらっと流しましょう。
不必要に筋緊張を起こしているのであれば、自律神経系の問題、機能低下が疑われます。
必要性に応じて筋緊張を起こしているのであれば、自律神経系は正常です。
つまり、肩こりや腰のハリが正常であるのならば、自律神経系は正常であり、当たり前に肩こり、腰のハリを作ります。
こうなると後は適応=ある意味で生活上の慣れの話になります。
つまり、生活上肩こりになりやすい姿勢がその人にって良い状態であるのならば、都合が良い状態であるのならば、肩こりである状態の方が自然であるということ。解消する必要性はない。
当然揉み解す必要性などない。
「でも、不都合だから解消したいと来院するのでは?」
はい、こういう質問が返ってくるでしょう。
でも、すでに書いてあるように、筋骨格構造、重力の問題で筋緊張を作り体を支えている結果が肩こり、腰のはりなのですから筋骨格構造上筋緊張をせずとも、重力に負けない位置に戻す=Zero-Positonに戻すこと、そのうえで自律神経系の機能低下があれば解消すること。この二つの要件を満たせば、ケガ以外の肩こり、腰のハリの原因がなくなるわけだから、肩こり、腰のハリを維持していられなくなります。
自律神経系の機能低下の解消方法はいろいろありますが、タッピング程度の軽い刺激でも可能ですのえで、わざわざ力尽くで解す必要性はない。
最後に『患者満足度』の話になるが、うちはあくまでも『顧客満足度』と考えています。
患者と顧客の違いは、患者=耐えるもの、顧客=依頼者あるいは取引相手。必然的に意識が変わります。細かな違いは各々で再定義してほしいところですので割愛。
要は、時間をかけることがサービスです、傷めつけるほど効果が高いですという教育の結果です。
根拠という意味では実はさほど根拠がなく、心理的に満足したかもという効果が期待できるかも知れないということですね。
うちこと泰心堂は
1.治癒力が発揮される状態は○○です
2.だから〇と□と×とが~となるとその状態になりますよね?
3.だからうちは~の状態を作ることで自然な回復を邪魔する要因を解消していくんですよ
と施術方法と目的とそのための検査、調整など一式を顧客に提案して施術を提供しているので、時間じゃなく、ダメージ量の多寡ではなく施術の価値を提供しているだけのことです。
経験則も必要ないとは言いませんが、論理的かつ合理的な施術は大事だと私は思います。
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