病因の考え方
ども、からだのエンジニア 泰心堂こと藤井崇次です。
本日のお話は、病因=病気になる原因というお話。
ここも流儀流派、術式により様々な角度からの考察があるので泰心堂式としてご理解くださいますように。
基本的に人の体は自らを治そう(維持しよう)という力があります。これ東洋医学においては、当たり前の機能と考えているので、特に名前がついていません。気血営衛過不足なしとでも言うのでしょうか。経絡治療の概念だと「脈平らかにして疾なし」の状態ですね。自然治癒力というのは東洋医学の概念ではなく、あれはルーツを辿るならヒポクラテス、そこまでいかないのであればクロード・ベルナールでしょうか。それともマックス・ノイブルガー? 前者は生体における内部環境の固定性を提唱した学者。後者は『自然治癒力学説史』(1926年)の著者。あとはクロード・ベルナールの影響を受けたというウォルター・ブラッドフォード・キャノンでしょうか。彼はホメオスタシスという言葉を作りました。
ま、学説は良いとして、人が病気になるイメージとしてはこんな感じですね。
外因+内因+不内外因 > 体の維持・修復機能(蔵府経絡の生産性)
〇外因は主として季節の影響など、外気が体に与える影響
〇内因は感情の過剰不足によりかかる心理的な負担
〇不内外因は内因、外因を除く理由。外傷、睡眠不足、食事の過不足などで体力が十全に発揮できない状態
を示します。
体の維持・修復機能を働かせているのは、”東洋医学”では、蔵府経絡とそれをめぐる気血(水)です。泰心堂では気血津液病証という尺度、判断基準を採用しないので主として気血の問題として捉えています。
そして気血のもとが、触媒である精気(先天の気)と材料である水穀の気(飲食物、後天の気ともいう。)。簡単に言うと燃料だと思ってください。
東洋医学では死生観というのがあり、生きて死ぬ、そのためのエネルギーのようなものを持って移り変わっていくという考え方です。人の場合はそれを司っているものを精気と呼びます。人間、寿命がありますので生きているだけでも寿命が減ります。このことを自然な”精気の虚”と言います。病気になると、頑張って体の状態を維持しようとして、精気をより多く消費します。普段よりも多くのエネルギーを必要とするからですね。病気の状態が長く続けば、その分、多くの精気を消費します。この状態を(病的な)精気の虚として捉えます。
泰心堂の鍼灸の考え方は総じてこの精気の虚を補うという考え方をしています。流れが悪ければ、流れを正そうと精気を使うわけですから、経絡=力の流れを鍼灸を持って反射的整えてうまく流れるようにサポートすると、精気の消費量が減ると考えられるかと思います。
針灸での施術の前に、この辺のお話を聞いておくことはとても大事です。何が病気を引き起こしたのか? それは排除可能なのか? それとも代替可能なのものなのか? 慣れるしかないものか? など。
たとえば、ぎっくり腰。ぎっくり腰は病院に行くと急性腰痛と名前がつくくらい立派な病気なのですが、鍼灸的な分析をするときは病名ではなく、至る状況でどの程度のものかを判断します。
熱いところにいることが多いのか、湿気ているところにいるのことが多いのか、寒いところにいるのかなど、季節、気候、温度湿度などからだの影響を与える環境要因などで違いが出ます。これは外因ですね。
職場環境や家庭環境でも変わります。例えば上司が細かく、何かと駄目だしするのでストレスがたまるとか、逆に誰にも気にされないとか。これはその場でどういう風に”自分が思うか”というお話なので内因ですね。
肉体労働でも、工事現場と介護事業ではかかる負担が違います。営業で一日車に乗りっぱなしの人と講師などで一日立ちっぱなしの人でも違います。また食事や睡眠でも変わります。これは不内外因ですね。
施術にしている期間に例えばですが、寒いところでの作業をしばらく変わってもらえるのか、作業場を変わってもらえるのか、重いものを持つ作業を変わってもらえるのかなど症状を改善するために何ができるのか? その判断をするためにも必要です。
ちなみに、外因+内因+不内外因と加算で表現しているように多くの病気においてこれらは密接に関わっています。
例えば、寝不足で風邪ひいた。
外因 風邪ひくようなところにいた。熱い、寒い、ほこりっぽいなど
内因 だるい、やる気でない、頭働かないなど体が活性化する要因がない
不内外因 睡眠の質が悪く体力が回復しない → 免疫力低下による感染、発症
こんな感じ。
ま、現実的な問題では目に映らない、理解しにくい心理的ストレス(内因)が一番厄介なんですけどね。
ちなみに心理的ストレスの解消に良いのは、”目に見える可”と”王様の耳はロバの耳”ですね。
前者は目標設定と目標の具体化、目標に至る道の具体化です。積極的な方はこちらが向いています。
後者は内側に抱えたことを吐き出すこと。私はノートに書けるだけ書き出せと指導します。時間はそうですね長くて5分もあれば十分でしょう。
1.毎日決まった時間に行う。
2.決められた時間内だけ行う。
3.その日その時に感じている不満を書く
4.ノートに書きなぐる。
5.時間が来たらノートを閉じしまう。
これがやり方ですね。決まった時間に行うのはスケジューリングの仕方を体得するため。規則正しくするのって案外難しく、逆にうまくいくとある種快感です。時間を決めるのはだらだらやっても無駄だから。会議とかで発言できない方に共通することですが、「考えている間に」という言い訳。これ言い訳です。そもそも準備できていない時点でアウト。なのですぐに考えたことをまとめる癖をつける。三つめは、主題をぼやかさないためと何を不満に感じているのか探るため。心因性の場合はそこででた一番大きな問題を、無視するか、折り合うか、妥協するか、改善するか、解消するか、叩き壊すかをしないと最後の一歩分が埋まりません。四つ目は目に見える形にするということ。アウトプットですね。なのでノートに書くということと消しゴムはなしというのは基本ですね。チラシの裏とかだと散逸してしまうのでお勧めしません。ゼンタングルとかも発想は似ているような気がしますね。五つ目、時間を区切ったのですから、ほかの時間は気にしない。人生で使える時間は有限です。わずかです。ならば恨むごと、不平不満に使う時間など5分で十分でしょう? そう意味を込めて吐き出したことはしまっておく。できれば鍵付きの引き出しなどがお勧めですね。
人によって1~2ヵ月ほどこの作業をしてもらいます。
「なんか、針灸の仕事じゃないのでは?」
いえ、本来はこちら側こそが仕事だと思います。だって、針灸を通じて人生を変えてもらうのが目標なのに、以前と同じ状態にもどしてどうするのでしょうか?
泰心堂では希望者と長期療養者を対象にこの書き出す指導をしています。これ、まんまビジネススキルなんで冗談抜きで人生変わります。うちのお客様の中には、会計士の試験合格した人もいます。
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