質問に答えます。その56 KHTが効果を発揮する急性腰痛と効果を発揮しない急性腰痛
ども、からだのエンジニア&からだの専門家 鍼灸師&整体師 藤井崇次(泰心堂)です。
先日、鍼灸師仲間に聞かれたのでここでこっそりと質問を返そうかと。
その質問が
「藤井先生は高麗手指鍼術を使っているそうですが、あれって症状によって効く、効かないってあるんですか?」
というものでした。
高麗手指鍼術は韓国発祥の手を全身に見立てて施術する反射療法の一つです。
その施術の特徴としては、手に小さな鍼を置いていくというものです。
手は全身の中でも敏感な部位であり、状態によっては非常にわかりやすい過敏圧痛点という反応が出ます。
全身の部位に対応した相応部位を利用した相応点療法、全身の経絡に対応した手気脈を利用した気脈療法、左右の三つの病的体質を組み合わせた三一体質論と統治療法、三一体質とキネシオロジーテストを利用して即効かつ持続的な効果を期待する五治処方などで構成される一連の施術体系を持ちます。
そのため、しっかりと学んだものであれば体質分析、生体反射などを利用することで的確な処方ができ、施術に迷わないというのが一つ大きな魅力です。
得意症状は、自律神経系の不調からくる症状全般。特に泰心堂はめまい、頭痛など頭部症状、内臓疾患系を得意とします。
一方で、実は急性の痛み疾患では得意/不得意が大きく分かれます。
痛みの強い神経性疼痛の場合は、典型的な疼痛緩和処方(膀胱勝方+胆勝方)がよく効果を発揮します。
一方で、外傷性疾患の場合や外傷性の筋痛の場合はその治癒の過程で痛みを出すことで患部の運動性を低下させ、保存することで治癒を促進するという側面があります。
この場合、必要な痛みは必ず残りますし、残した方がその後を考えると良い。
しかしながら昨今の患者さんは、これ、施術者側の責任が大きいとは思いますが、痛みを取ること=治療?という錯覚を好みすぎて、治る過程で痛みを出すからだの仕組みを無視して結果再発してしまうことも少なくないようです。
もちろん“痛すぎる”のは精神的にも体感的にも辛いのでできるだけ抑えるという考え方は間違ってはいないのですが、取れない痛みを取ろうとすると施術としては失敗します。
なので急性腰痛の初期はKHT単独でというよりは、KHTの疼痛緩和処方+相応点療法+患部への処置とバランスを考えた処方が大事になります。
また、慢性疼痛についても同様で、それが外傷性、いわゆる傷によるものであれば、KHTは補助的に使い、神経性疼痛の場合は主として使うなど状況、状態に合わせた柔軟な処方が大事になります。
要は使い方ってことですね。
上手に治癒に至るコツは、痛みと上手に付き合うこと、そして停滞期が来るということを意識して短期的な症状の好不調にとらわれずに治癒したあとの目標設定や行動計画を立ててしまうことですね。
とても便利なKHTなのですが、学ぶ場所が少なく、また道具が通常の鍼灸道具に比べて手に入りにくいという点、そして瑞金療法協会の方針で徐々に手指鍼から接触刺激具(金鋒)へとシフトしつつあるという問題があります。
この辺の問題は今後考えていかねばならない課題ですね。
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