現場での鍼灸術 刺さらない鍼”てい鍼”でなぜ症状が快癒するの?
どうも、からだのエンジニア&からだの専門家 鍼灸師 泰心堂 藤井崇次です。
本日は火曜日ということで外部施術の日ですが、気分的には現在鍼灸師モード。整体、カイロプラクティックの話ではなく、生体と鍼灸の話をしようと思います。
はい、こちら、私、藤井崇次(泰心堂)愛用のチタン製てい鍼。製作者は『手作りてい鍼ドットコム』の小越建二先生。
鍼灸学校で紹介されるばね式や鍼灸道具として店頭等で販売しているものとは先端形状が違います。ええ、そこがわざわざ小越先生に作ってもらった所以ですね。
ちなみにこれ2本で1対の構成。
最初からとある調整術を念頭において設計したからそうなっているわけですね。
では、これからそれの話をしましょう。
なお、これセミナーなどではお話したら数万円行く話なので、詳細は希望者が10人以上集まれば有料でプチセミナー的にお話してもいいかなとか思っています。その時はマイてい鍼2本持参ですかね?
さて、まずはキーワードを上げましょう。
”均衡”と”平衡”ですかね。
基本ロジックは、経絡治療の最も基本的な概念である『病=経絡の変動』という定義に従います。
そのうえで、経絡の変動の検出方法とその確認方法から脈診をとりあえずバッサリとカット。なぜならば、脈診はRDBが形成されていないと使えない方法論であり、なおかつ施術者の臨床的勘というはたから見れば曖昧そうな基準しかないという欠点があります。
で、そこから誰が確認してもそのように確認される道具を用います。例えば良導絡テスターなど電気抵抗テスターなどが便利です。なお、セイリンさんのココロケーターは、探すだけであればコストパフォーマンスが高い良製品ですが、数値が把握できない点で×。ええ、私が過去に阪村研究所の良導絡探索器9号 スポットテスター?を採用しなかったのも同じ理由です。
ちなみに私は旭物療器研究所の耳介探索器兼低周波通電器『ひびき7号』を代用として使っていましたね。
裏技にはなりますが、秋葉原などで販売されている電気工事用のテスターでも計測自体は可能だったりします。あくまで裏技扱いでお願いします。
ほかにはレトロな方法では、赤羽幸兵衛先生の知熱感度測定法などもGoodです。なにせ線香1本あれば可能。なお、ご本人も使っていたという補助具は未だに見つけたことがありません。どなたかお持ちの方は寄付いただけると大変うれしいです。
さて、なんで経絡治療なのにこういう話になっているのか? というと経絡治療は判断基準が曖昧だから、ではなく鍼灸という施術方法自体が妄想やら感覚やら、経験則やらを重視している部分が多分にあり、現象学的に定量的な観察が非常に難しいからです。
簡単に言うと
「どうして効くんですか?」
「気合!」
と
「どうして効くんですか?」
「○○先生だから」
と
「どうして効くんですか?」
「それは(長時間にわたる妄想的論理構造)」
とが同時に存在し得るからです。
ただ、間違ってほしくないのは経験的医術であり、そういった妄想的論理構造の基幹部分=東洋哲学が常識的だった世界、時代においてまじめに検証され、効果を出してきたとされるものであり、一定の留保が必要であることは否定できません。
事実として経絡というのは現場で使っていて説明と効果判定と様々な面で便利に使える妄想の産物ですから。※経絡を発見したとされるキム・ボンハン教授のボンハン学説は否定されています。
話を戻しましょう。
要は、再現性を考えたときに数値で比較できるというのは大きなメリットになり得るということです。なので脈診よりも、テスターを使ったほうが観察しやすいという面があり、初期の段階ではこういったツール的なものを使うのは有効であると考えます。
なぜ、今回電位を図ることで経絡の変動を図ろうかというと、その前提としては『皮電点』のお話があります。皮電点というのは鍼灸学校の学生であれば教科書レベルなのでざっくりと石川太刀雄先生が提唱したもので、『皮膚ー血管反射』の応用研究から皮膚電気抵抗の減弱点を見出し、その説明として脊髄分節ー皮膚分節を介して内臓の不調が皮膚に現れ減弱点=皮電点を形成すると提唱したわけですね。細かなところは専門書や論文に譲ります。
一つ欠点があって、汗の問題がありますのでそのへんは計器の取扱説明書をしっかりと読んでくださいね。
さて、では具体的な技法に入りましょう。
やり方は簡単で、
1.左右の十二井穴の電気抵抗値を調べます。
2.最強/最弱の組みあわせを見つけます。
3.両井穴に対して『てい鍼』を当て、患者に深呼吸を数回繰り返して貰います。
4.胸郭の拡大縮小のリズムが変動したことを以って施術終了。※仙骨律動でも、一次呼吸でも可。
5.再テストとして左右の十二井穴の電器抵抗値を改めて調べ、近似していれば終了。収束ではなく、拡散方向に電気抵抗値の分布が向かっていた場合、拡散具合がある範囲で均等(中央値に対して同心円状に分布)であれば許容。偏りが甚だしいようであれば再度、最強/最弱の組み合わせで調整を繰り返す。
ちなみに泰心堂の場合は均衡と平衡を考えていて、虚実ー補寫はあまり意識しない。観察の結果から再構築した泰心堂のロジック的には、自律神経系による自動調整が働くので意識しなくともよいという結論になりました。
意識するのであればイオンパンピングコードを用いて電位差の調整を行うのも面白い。そのへんのお話は間中喜雄先生のイオンパンピング療法を学習されると良いかと。
さて、定義に戻りましょう。
病=経絡の変動→症状の派生
であるから、経絡変動が収束傾向(あるいは均衡状態)に向かえば、変動状態から平衡状態へと移行すると考えられる。その結果、身体の修復調整機能としての自律神経系、免疫系の機能が発揮されることとなり、自動的治癒が促されていくと考えらえる。
ゆえに、てい鍼で接触刺激を用いて、電気抵抗に対して影響を与えることができれば、体は治癒へ向かうと言える。
だから刺さらない鍼でも、接触刺激を送ることで、身体が、症状が快癒していく。
し、か、も、からだの負担は最小限に抑えられるので、体力的負担は少ない。
一応、欠点を上げておくと、痛みに対する効果は刺鍼刺激に比べて少なくなる。
理由はひどく単純で、この両方でその場で消える痛みは、不必要な痛み=自律神経系の異常により生じた誤信号に限定されるから。
新たに傷を作っているわけではないので、侵害刺激による新たなゲートコントロールは生じず、既存の傷の治癒過程における認識→変化の過程で鎮痛が利くこともあるが基本的には、血行促進+炎症活性化(過剰の場合は一部不活性化)+発痛物質の適正放出となるので、人によっては一時的に痛みが増すことになる。
しかしながら、痛みを伴って治るほうが体にとっては普通のことなので、自然治癒を促進するという建前を掲げる以上は、痛みを取りすぎないほうが良い。
【応用編/現場でのお話】
ええと、なれるとテスターなくとも「ここ、これがそうだね」ってのは触ればわかります。みればわかります。
うん、まあ、そういう世界。
それじゃ、困るのでデモンストレーション兼用でキネシオロジーを用いたテストで確認すると良いでしょう。
キネシオロジーも語ろうと思えばいろいろあるのですが、鍼灸師的には、あるいは医療的にはO-Ring Testや入江式FTなどがイメージしやすいでしょうか? ただ、あれ使いにくいんですよね。ORTは三人必要だし、FTは意識せずに手を振ることができるかとかまあ、細かい話が多い。某氏のTRテストなどは個人的にはわかりやすいし簡単なんだけど、筋の無力感とかは、ね?
ということでわかりやすさを求めると、例えば三角筋とインジケーター筋としてセットアップした三角筋テストなんかが現場では割と使いやすい。
使い方としては
1.井穴に触れる
2.素早くキネシオロジーのテスト
正常なればロック、異常なればアンロックというようにセットアップしておくとわかりやすい。
基本的にこの繰り返し。ただし、個の方では強弱の順位は付けられない。
※ただし泰心堂ではデモンストレーション以外は、SM,STでさらっと判断しています。
調整経絡の選定は、弱の経絡を基準に他の経絡を触って、その状態が解除されるかどうかをキネシオロジーのテストで判別しなくてはならない。
1.弱化した経絡に触れる。
2.別の経絡に触れる
3.素早くキネシオロジーのテスト
調整経絡の場合、アンロック状態が解除(ロック)される。筋弱化解除→正常化。
デモンストレーションとしては便利なので活用してほしいところですね。
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