経絡の使い方
おはようございます!
からだのエンジニア&からだの専門家 鍼灸師&整体師 藤井崇次(泰心堂)です。
上の写真は、私が良く使っている”鍼”。当然、刺さりません。
さて、今回のお話は”経絡の使い方”というお話。ただし、国家試験前の鍼灸学校の学生さんは教科書の方をしばらくは基準にしてください。
別に、刺す鍼がだめで、刺さない鍼が優れているという気は欠片もありません。刺す鍼には刺す鍼のメリットとそれを使う意図、意思、操作があり、当然、刺さない鍼にも同じようなものがあるというだけです。
実際に、私も写真のような刺さることのない鍼も使いますが、刺すことができる通常の鍼で散鍼術(接触鍼術)も行えば、長鍼を用いて多穴透刺という技術も使うことがあります。
大事なことは判断です。今、目の前の状態に対してどうするか、何を用いるか、それはどうしてか、結果はどうだったかなど判断し、選択し、結果を観察することです。
さて、では経絡のお話に戻りましょう。
どうも、鍼灸師とか東洋医学者?と名乗っている人間は、経絡が病を治すと思っている節があります。
それはそもそもおかしな話です。
経絡的調整論もまた特定の経絡上に刺激を与えるとその経絡が調うというところで止まってしまっています。でも、よく考えてください、それってなんか奇妙じゃありませんか?五行相克とか五行相生とかどこ行った?
そもそもが陰陽二元論にしたって、実は陰陽循環論として展開されているごく一部にすぎませんし、経絡という概念もからだに用はエネルギー的なものが通る幹線道路のようなものを仮定して、それぞれに名前を付けたにすぎません。そうね、東を通っているルートとかそんなのりです。
で、それらが議論されたのは、検査器具や画像診断、膨大な統計学的データの処理などができない時代のお話です。
さらには、経絡を利用している調整法にもさまざまな種類があり、たとえば、太極療法という方法論も現場で有効に機能している。太極療法の概念自体は、ちゃんと学ぶべきだとは思いますが、行為としてはいつもと同じところにいつもと同じように刺激をすることでからだの経絡が、気血が、エネルギーが自ずと調整されるというある意味でざっくりとした調整で条件次第ではあるが、細かく経絡を見て、単一経の調整にこだわった調整よりも効果が出てしまうことは多々あります。
それについて、「なんで?」という問いかけを投げかけたことありますか?
私は六王鍼こと鴻仁式十二鍼穴法を開発者 長野仁先生(鍼灸鴻仁)に直伝講習会で習いましたが、未だ、便利に使っています。これ経絡治療雑誌の中で、まあいろいろと言われていたあれです。たった6か所、表裏の計12か所に切皮程度の刺激をするいわゆる鯛焼き療法なわけですが、それでも良くなってしまいます。※良いことですが。
説明するのなら、「(生体エネルギーが)循環しているから」ということになるのですが、まあね、なんというか。
もちろん、弁証論治と言われる、論理式がしっかり構築された調整をしても効果が出ます。感覚優位の調整で、経絡適当に選んでいるように見える調整法でもまた効果が出ます。ある意味では同病異治。
経絡っていったい何なんだ!?
これがずっと問いかけていること。
で、原点に立ち返ってみた。
経絡、経穴は経験知。先人たちが仮説を立て、検討し、観察し、集積してきた経験知。
じゃ、それは何のため?
ま、そこから先はいろいろとあるのですが、明確な転機はキネシオロジー。私の場合は脈診への懐疑から脈診とは何か?を突き詰めたら、要はキネシオロジーと同じものであるという一つの解を得た。何故ならば、脈診の本質は問いかけとそれに対する感触変化であるから。問いかけを行い、脳ストレスによる筋反射の変化をもって判断するキネシオロジーと同じ。
ならば脈診を行わなくとも、東洋医学的施術は成立する。だったら置き換えてしまえとさらっと置き換えみた。この行為自体は、たとえば知熱感度測定法として赤羽幸兵衛先生等も行っているし、良導絡などでも同じことを行っている。私はそれをキネシオロジーに置き換えた、ただそれだけ。もっと直接的には入江正先生が入江式FTとして発表しています。
そして、病的状態における経絡のエネルギー状態というのをキネシオロジーを用いて観察、選択してみた。近位、接触、切皮、刺鍼深度などを変えながら何度もキネシオロジーのテストでの変化を追ってみる。そういうテストを延々と繰り返してみた。
その結果はというと、なんと口に出さずに、そこに調整する意思を持っただけでも変化をする人たちが観察された。まあ、少数ですけどね。
たとえば肩の上げ下げしてもらった時の関節運動制限を一つの目印として、そのときの経絡の状態をキネシオロジーのテストでチェックする。キネシオロジーのテストはエネルギー低下状態を拾う(=脳がストレスを感じている状態)とされているので、反応があった経絡=エネルギー低下が検出されたとひとまず定義。※段階や定義の仕方は色々とある。
弱化を示したポイントに対して、接触、切皮、刺鍼深度などを変えながら調整→反応確認を繰り返し、その結果を観察していく。
大きな変化があったのは、接触と切皮。関節可動域の制限が明らかに解消される。これは坂村研究所のマグレイン(シール付き粒鍼)やトワテックのTipal、セイリンのパイオネックスZero、同社パイオネックスなどを貼付してみることで確認できる。※パイオネックスのみ切皮状態になる。ほかは皮膚表面で留まり、接触刺激に該当。
刺鍼深度については局所の筋緊張などが強い場合は多少の影響があるようだが、このテスト法では大きな差が見られなかった。
この結果自体は、この時点で身体調整の要は経絡ではなく、中枢機能(脳、脳幹、自律神経系)であると仮説を立てていたので大して驚きはなかった。何故ならば筋緊張もまた、自律神経系を含めた神経系の命令や外部刺激に対するリアクションとして発生するものであり、刺激を知覚することで中枢機能が反応を起こすことで変化しうるものであると考えられているから。※生理学に基づく。
とはいえ、どこを刺激すれば良いかという問いに対して依然、便利なものであったので経絡を用いていたというのがこの時点。
さらに進めるためのツールが、キネシオロジーにおけるセラピーローカリゼーション(Therapy Localization)という考え方と方法である。つまり、メジャー/マイナーあるいは、原因と派生現象という考え方。
これ自体は、実は経絡治療の中にも存在する。つまり、原因経絡であるか、派生(波及)経絡であるかという話である。※言葉自体は先生方により異なる。
このセラピーローカリゼーションを通じて、どこから調整したらもっとも効率が良いか、原因個所にアプローチできているか? この作業を術式に組み込むことで、からだの本来の力を引き出すことで自ら回復モードへと入っていく、そういう体へと調整を通じて促す泰心堂の経絡の使い方が形成されてきました。
結果、泰心堂では少数穴施術をわざわざしているのではなく、少数穴調整、短時間調整に必然的になってしまったということです。
大事なのは経絡がではなく、経絡を通じて情報を得、何が体に影響を与えているかを考察し、検査を通じて、情報を集約、精査し、無理なく自ら回復モードへと入るきっかけを作ることです。
この辺、操体法の原理とよく似ていますね。
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